見沼区春岡 もちづき歯科 歯科医師の後藤です。
先日、「私、子供生む度に歯が悪くなって、もうボロボロなの。なにせ、4人も生んだから」と仰る患者様がいらっしゃいました。昔は「子どもを1人産むと、歯が1本無くなる」と言ったそうですが、実際はどうなのでしょう?
今年4月、東京医科歯科大学の研究者グループが「出産を重ねた女性ほど歯を失っている」という疫学調査の結果を発表しました。妊娠中は、体の様々な部分に負担や変調を来たします。以下のような、ホルモンバランスの変化などにより、虫歯や歯周病にもなりやすく、進行しやすくなります。

母体から見れば「異物」である胎児を母体の免疫機能から守るため、免疫寛容といわれる抑制作用が働きます。口の中に限らず、感染症にかかりやすい状態になります。

妊娠中は唾液の分泌量が低下するため、汚れが溜まりやすく、細菌が増えやすい状態になります。
唾液自体のphがやや酸性に傾き、虫歯菌が産生する酸を中和する働きが弱まり、歯が溶けやすい環境になります。

女性ホルモンを栄養源として好む歯周病菌が増える傾向が見られます。女性ホルモンは、歯肉などの組織に対しては血液循環に影響を与え、普段よりも容易に歯肉が腫れやすくなります。

つわり、酸っぱい物を好むという味覚の変化、歯ブラシを口に入れるのが辛くなり歯磨きをおろそかにしやすいこと、間食の回数が増えることなど、すべて虫歯を増やす原因になります。
このように、妊娠中、口の中は、虫歯菌や歯周病菌の増殖を抑える働きが低下し、口の中の衛生状態に悪い影響を及ぼす変化が多くあるため、歯と歯肉にトラブルが多く発生するのです。
また、妊娠中に歯や歯肉に異常を感じていても体調などから思うように外出できなかったり、出産後は育児に忙しく通院できなかったりして、悪化させてしまうこともあるようです。
虫歯も歯周病も早い段階なら簡単な処置で済みます。妊娠中であっても、安定期であれば大抵の歯科治療は安全に行えます。生まれてくる赤ちゃんの健康のためにも、お母さんになる方は、ご自身の口の中を健康に保って下さいね。